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障害者雇用数の水増し

猛暑継続中にとんでもないことがおこりました。

中央官庁や都道府県で障害者雇用促進法に沿って障害者を雇用することが義務化されている行政機関で、雇用数を大きく下回る報道がありました。行政機関は全従業員数に対して2.5%以上の障害者を雇用することを定めています。現在の報道では、水増しは6省庁約3千人以上になり、都道府県は青森から沖縄まで28県になるとのことで、今後調査が進むとさらに水増し数が増えると予想されます。

中央省庁では環境省、農林水産、総務、国土交通、防衛、法務の計6省で水増しの可能性があり、特に国交省では昨年6月時点で雇用していた890人の障害者のうち、半数以上が障害者手帳を持っていないとみられています。

都道府県について、茨城県は平成29年度時点で知事部局や教育庁などで雇用している463人のうち118人が障害者手帳の確認がなく、担当者は「認識不足だった。水増しの意図はない」と理由を説明しています。長野県も今年6月時点で99人のうち11人が未確認、石川県と同県教委も障害者手帳や診断書を確認せず、本人の自己申告のみであり、昨年6月時点の雇用率は当初の公表値2・41%から1・41%に、県教委が2・19%から1・45%に下がり、当時の法定雇用率の2・3%と2・2%を大幅に下回ることになりました。島根県では身体障害者は採用時に手帳を確認していましたが、他は「自己申告書」をもとに算入、長崎県では自己申告書の病歴欄や、病気休暇などの申請に使う指定医や産業医ではない医師の診断書をもとに算入していました。

一方、障害者雇用率を厳しく指導されている民間企業では、平成29年度に法定雇用率を達成した民間企業の割合は5割を超えています。例えば、ホンダは各事業所や自動車部品を製造する特例子会社3社で29年度に約1千人の障害者を雇用しており、雇用率は2・3%と法定雇用率を上回る水準になっています。吉野家ホールディングスは食材加工工場などでの採用を進め法定雇用率を上回っています。また昭和35年から長期間にわたって知的障害者の雇用を続けるチョーク製造の日本理化学工業(川崎市高津区)など、中小企業もさまざまな工夫で戦力になる障害者雇用を進めています。

今回の障害者雇用数の水増しが生じた原因として、行政機関は機密情報や個人情報の取り扱いなど高度な業務であり、それに対処できる障害者は少ない、との考えが根強くあると思われます。障害の有無にかかわらず人にはそれぞれに特異な能力があり、それを研鑽することでさらに求める業務を担当できる可能性が広がります。

今回の水増し事件は彼らの可能性を認め、育てる機会を失うことにもなりました。ユニバーサル社会の前提は多様な人々が相互に価値を認め合う生き方であり、福祉の役割は、お互いさまの考えや可能性を守り、醸成することになります。これからも一人でも多くの方に福祉を理解していただける活動を続けていきますので、ご協力の程お願いいたします。

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