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障害福祉の現状と方向性

H25年8月の障害者自立支援法の制度改革に向けて、「障がい者制度改革推進会議」が行われている。奈良県でも3月19日に奈良教育大学で講演会が開催された。以下に奈良県の主に就労支援の現状、方向性についてまとめてみた。
(現状)
平成21年度の奈良県の障害者雇用数は1,386人(平成22年6月奈良県労働局)です。これは56人以上の従業員規模の企業実績とそれ以下の企業の雇用数を推計して、約3,000人といわれている。奈良県の障害者数は約80,000人、その内労働年齢者は約30,000人なので、雇用率は約10%と考えられている。
障害福祉施設の状況は、主に知的障害の生活及び介護事業者が中心で、精神障害(統合失調症対象)者の施設が2団体ある。中途の身体障害、高次脳機能障害及び発達障害者に対応できる施設は整備されていない。
就労支援は、就労継続支援事業所が新体系への移行で開設された程度で、特に就労移行支援事業については、整備が遅れている。
(障害福祉の基本的な考え方)
障害福祉制度の改定作業の経緯から、ようやく障害者を健常者と同じレベルでとらえる取り組みが始まった。権利条約からも障害者の権利を一般の方と同等にし、障害特性の部分のみ、社会的な支援として、合理的な配慮が必要である・・との見解です。その基本理念はソーシャル・インクルージョンとなる。
障害福祉サービス制度もこの配慮の一つであり、差別的な扱いはこの機会に完全に排除することを願っている。
(今後の就労支援制度の方向性)
障害者も健常者も同等であれば、障害者が社会的に自立した生活をすることは当然なことである。そのために、社会的、合理的な配慮として、就労支援制度の総合的な準備が必要になる。
1.障害特性の把握と二次的な障害の改善について
 障害特性から明らかに就労に不的確な機能を明確化する。次に二次的な障害である、発達の遅れや、知識や技能習得の遅れが支援する。そのために教育及び訓練の充実や集団環境の提供が必要となる。現在の「就労移行支援事業」を充実させるために、県内の事業所で作成している「利用者のフェースシート」や支援内容の統一化が急がれる。また職員のスキルアップも同時に推進する必要がある。
2.障害特性に配慮した働く場所の構築
 奈良県には56人以上の従業員規模の企業が約400社しかありません。その内多くはサービス産業です。特例子会社はⅠ社だけです。そのために知的障害者は雇用先が限定される。また他の障害でも、専門的な技能やサービス事業にありがちなビジネスマナーや応用性に長けた技能が要求される。社会経験の少ない障害者の雇用は難しくなっている。奈良県では地域性を考慮して、障害特性に応じた仕事の場を新規に作り出すことが必要となる。「就労継続支援A型事業」のさらなる充実が急がれる。官・産・知・福・民が連携したソーシャルビジネスなどの創造的な起業など、新たな公共づくりに向けての柔軟な取り組みが求められる。

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