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農作業と職業訓練その1
近年、障害者の就労の場として“農業”が注目されている。すでに取り組みを行っている事例の収集と効果など可能性を考えてみる。平成20年3月に独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所が「農業分野における障害者就労の手引き」を作成された。ここでは農作業を職場としての位置づけと、園芸療法などのリハビリ的な効能についても触れられている。対象とする農業品目は、野菜やキノコ類、果樹、鑑賞植物、畜産であり、水耕や露地、菌床などの栽培方法別の事例も整理されている。
1.福祉的な農作業と園芸療法について
障害者と農業・園芸との関わりは、園芸療法、園芸福祉として福祉分野で先行して行われてきた。園芸療法は、園芸活動が持つ特性を高齢者や障害者、社会的に不利な立場にある人々の心や体のリハビリ、社会復帰、生きる力の回復などに役立てていこうとする取り組みである。主に身体機能及び心の回復を主な目的にしている。
野菜栽培や畜産などの作業では、心身の癒しの機能があると考えられ、日本でも90 年代から医療や福祉分野における園芸療法への取り組みが行われている。
園芸福祉は、花・果樹・野菜・その他の植物の栽培や育成、畑の管理・運営等を通じて得られる園芸の効用を生かして、より幸福に生きることを目的としている。
2.農業分野での障害者の受け入れ状況
農業分野では、施設園芸や畜産経営を中心に、農業経営の中で障害者を「労働力」として受入れる事例が、近年増えてきた。受け入れ側のメリットとして、①障害者が参加することで職場の雰囲気が和む、②障害者の仕事への熱心な姿勢が他の従業員にも波及し、作業効率が上がるなどの効果が指摘されている。
課題として、①農業では、雇用労働が必要とされる場合でも、収穫期など、季節的な需要が多く、年間雇用を望む障害者側の意向に合わない、②零細農家が多く、雇用する経営的なゆとりがないなどがある。
農業分野での障害者就労は、始まった感があるが、福祉事業者が重視する点は、障害者の雇用の実績を追及するだけでなく、従事する障害者の特性や就労能力の把握及び思いなどを検証することを同時に行う必要がある。
それにしても、この季節に畑に行くとすがすがしい風と柔らかな日差しがとれも心地よい。農作業による就労支援のスタートは、この自然の恵みを素直に感じることができる「こころづくり」にあると思っている。ぷろぼのでも職員の方がお持ちの畑をお借りすることができましたので、この秋から小麦や菜種の栽培を計画している。来年の夏には自家製のパンを食べることを楽しみに・・・。