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表現によっては

桜が散り終えた先週、奈良でも統一地方選挙がありました。選挙速報を見ながら皆様の日焼けした表情から、かすれた声で喜びの気持ちを語っておられる様子を拝見し、選挙運動の大変さを改めて感じていました。立候補者の公約に医療、介護、教育の充実」を掲げる方が多くおられましたが、その表現に少し違和感を覚えていました。

医療と教育はその分野を総称する表現になりますが、なぜか介護のみ具体的なものになっています。この場合の介護は「老人介護」を意味しており、高齢化社会で老人介護は皆様の直近の課題になっているので、このような言葉の並びになる意図もよくわかるのですが、正確には、「医療、福祉、教育の充実」になると考えます。

介護は福祉の一つの分野で、通常は老人介護や障害者介護があり、「福祉」がそれを総称する言葉になります。公約はその時代や地域の課題を短い言葉で表現しようとしますので、仕方がないのですが、この表現が福祉の現場に大きな影響を与えています。福祉でなく「介護」を強調することで、福祉がいつのまにか食事や掃除、排せつ等の介助することだけであるかのイメージが作られ定着し始めています。

福祉には、社会的弱者を対象に児童福祉、高齢者福祉、障害者福祉等があり、業務は、生活・介護支援、社会参加支援、就労支援等に別れ、それぞれ対象も支援する内容も違うので、介護に限定したものではないのです。福祉の一部の老人介護を主張するのでしたら、例えば、教育では英語やIT教育を、医療では高度医療や身近な在宅訪問医療のように具体的な表現になると、文字の並びがきれいになるように感じます。

近年、福祉はニートや引きこもりの方、シングルマザー&パパ、触法者などの困難者も含まれ、さらに「福祉」を「社会援護や社会保障」の表現に変えると、社会的弱者や困難者だけでなく、一般の方もその対象になり支援する業務もさらに拡大します。

高齢になり、また障害を持つと、時々、“ついに福祉の世話になるのか・・”また“あ~あ、障害者になってしまったのか・・”と落胆して言われる方がおられます。老いることは誰にもあり、また病気や事故及び遺伝要因で障害を持つこともあることです。「福祉」はどなたも素直にこの言葉を受容でき、自然に表現することができ、場合によっては利用できるような気持ちになることができる、そのようなバリアのない社会になることを願う気持ちが込められています。ちょっとした表現が多様な意味を発信し、それぞれの解釈が広がります。福祉があたりまえに認知できる社会にするために政治や行政と共に頑張りたいものです。

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