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笑いとリズム

大阪には笑いをつかさどる庶民の文化・芸能として上方漫才があります。演者にはそれぞれボケ役とツッコミ役があり、互いにテンポの良いリズムを取りながら会話が進んでいきます。話題や内容は身近なことで、たわいもないものですが、なぜか共感できることが多くあります。聞いている人の心の中に遠慮もなく、入り込んでくる話術が漫才であり、大阪人が持っているDNAのようなノリの良さだと思います。

たぶんにツッコミ役があらすじを示す担当になり、テンポよく話の内容を進めていきます。しかし、それだけでは単に心地良い話になってしまいますが、そこにボケ役が間をとり、ゆったりした話題を組み入れることで、いつのまにか話の内容が鮮明になり、世界が広がり、印象が深まります。そこが笑いのツボなのでしょうね、事前に計算高く準備されている間を示されることで、聞いている私たちの心に隙間を作ってくれ、そこに安心とゆとりを運んでくれる気がします。安心した笑いが上方漫才の本質なのかもしれません。

福祉の現場の面談でもこの上方漫才の話術はとても参考になります。話の内容にテンポとリズムを付け加えることで、内容がとても印象深く、しかも好意的に伝わっていきます。深刻な内容の時には、深刻なテンポとリズムが必要になり、前向きな内容の時には、エネルギーを感じられるテンポとリズムを取り入れることに心がけます。利用される方のその時の印象から得られるものを的確に受け取り、話の内容によっては、相槌や軽いツッコミ(繰り返し言葉)を挿入しながら、話しやすいテンポとリズムを加えることが必要になります。

漫才には事前に台本があり話の内容やオチ(結論)が決められていますが、福祉の現場の面談などには、個別の支援計画をもとに話を進める大筋の手順があるだけで、必ずしも事前に想定した内容や手順に沿って進行するとはかぎりません。話のテンポやリズムによっては、とても話しがたい内容が語られることもありますし、夢を広げるような前向きな内容になることもあります。

日本には、和歌や俳句があり、短冊に決められた文字数で思いを連ね、読み手がテンポやリズムをつけて歌います。不思議なことにそれが私たちにはなんとも心地よい音色に聞こえてきます。故郷の景色や情感が浮かんできて心地よさを感じる瞬間になります。日本の自然や文化、習慣から得たものがそれを感じさせるのかもしれません。今を生きている私たちは、いつも話しやすい場をつくることを心がけて、気の利いたツッコミとボケの楽しさを身に付けて、福祉の現場を盛り上げていきたいものです。

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