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福祉を考える

春日大社の若宮おん祭りが始まると奈良も師走になります、今年も障害者福祉の就労支援の現場で感じたことを月2回のペースで掲載を続けています。一年を振り返ると例年と同様にあわただしく過ぎたことを感じるのみです。

今年は「福祉」についてその意義を改めて考えてみることを課題にしました。12年前に「福祉」の業界に参加して当初は大きな違和感があることを感じていました、「福祉」で働いている職員も利用されている障害がある方も下を向き、まるでプライドが見受けられない状態でした。職員は他に良い職場がないので仕方なく「福祉」で働いている、また障害のある方も本意ではないが「福祉」を利用している、このように誰もが消極的な参加であるとの印象でした。

そのために設立当初の法人のテーマを“プライドのある自立を目指して・・”にしました。そのころの奈良の福祉の就労支援は、知的障害者のための施設が大半で、郊外に位置し、パンやクッキーを作る簡単な作業をしていました。施設長にお聞きしても一日に生産する個数や品質の目標もなく、また誰に売るか、どこでどのように販売するのかなどの計画もない状況でした。給与は一律3,000円/月であることに驚き、また「授産」という言葉、障害者を他より隔離された環境において一般雇用以外で働く場を提供するものとの意味ですが、初めて知った場でもあり、それがなんともむなしく感じたときでした。

障害者自立支援法ができ、「授産」から「主体的に働き自立する」方針に代わり、10年を経て奈良でも働いて自立することが徐々に浸透し始めてきたと感じています。隔離された職場から皆さんと同じ街中の職場で役割を得て働くことが般化されてきたのです。障害者福祉の就労支援が認知されはじめたことで、今まで働きたいと思っていた障害者が思いを素直に話される場面が増えてきました。社会の許容が広がると個人の忍耐が和らぐことになる現場に立ち会うことになりました。

この潮流は、障害者だけでなく職員も同様に「福祉」業務への思いが高まることにもなりました、当初に作った“プライドのある自立・・”は障害者だけでなく職員にも、関係者にも広がっていることを感じています。今年も多くの方が福祉の就労支援の訓練を経て就職していきましたが、それは皆さんの共通の喜びになってきました。「福祉」は人が生きる力を育成する役割を担っていることを実感することにもなりました。

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