ブログ
福祉から就職者を
近年、企業の障害者雇用が一段と進んできている。理由の一つに障害者雇用率制度の実施が強化された点がある。対象となる企業規模が従業員数200名以上になったことである。障害者の就職を支援する機関であるハローワークに、障害者向けの特別相談の部署が作られ、専門のスタッフが就職に向けた細かな支援をしている。またハローワークからすぐに就職することが難しい障害者は、高齢・障害者支援機構が運営する「なら障害者職業センター」の相談や短期間の訓練を受け、就職を目指すことになる。
もう一つの選択肢は福祉の事業所が運営する「障害者就労移行支援の事業所」を利用することである。ここでは最長で2年から3年間の支援を受けることができる。対象となる障害者は、一般企業への就職を希望していること、2年間の訓練で就職できる可能性があること、ご自分で通所できること、などの条件がある。医療及び介護支援が一段落し(リハビリなど)、生活及び社会参加が普通にできるようになった方である。
就労移行支援の事業所は、利用が決まった方に対して、就職に向けて現状の職業能力を把握するために「アセスメント」職業能力評価を行う。一定期間実務に匹敵する作業を行い、現状での適性を確認する。それに並行して職種や就職への希望や不安をお聞きしながら、順次、就職に向けて「個別支援計画」を完成させていく。健常者と障害者の就職支援で決定的に違う点は、健常者は就職に必要な技能や社会性を習得してもらうためのカリキュラムが中心になる。一方障害者のそれは、技能や社会性に加えて、障害特性から“現状ではできないことやできにくいこと”の課題が加わることになる。その点については相互の理解が必要となるので、福祉の現場では数多くの個別の面談を行うことで対応することになる。特に中途の障害者には、障害を負った現実を受け入れることになるので、とても細やかな対応が必要となる。以前は簡単にできていたことが、今はできない・・この差を容認することから支援が始まる。
就職のための訓練が終盤になると、企業見学や実習などが加わる。この時点で彼らの表情が生き生きとしてくる瞬間がある。就職へのイメージが具体的になり、自信がついてきていることを実感する。
就労支援員から就職が決まった報告を受け、本人と対面すると安堵感と満足感、そして少しの不安感が漂ってくる。長くて大変な頑張りを見ているだけに、いろいろな思いがめぐる。福祉施設から一般企業に就職する支援体制が少しではあるが整備されてきたとことを実感する瞬間でもある。