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社会的価値の変遷

今から10年ほど前から個人情報保護法が施行されました。法律の趣旨は、「高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、それを取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定め、個人情報の有用性に配慮し、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と書かれています。
また、個人情報の対象は、生存する個人の情報であり、特定の個人を識別できる情報(氏名、生年月日等)、複数の情報と容易に照合することで、特定の個人を識別することができる情報としています。

福祉の現場では、主に障害福祉サービスを利用される方の個人情報を取り扱うことになります。個人記録票や利用契約書などが順次作成され、また日々の訓練の状況や成果を日報に記録しています。これらは安全管理のもとに概ね5年間保存することになります。

また一般企業と同様に働く職員の個人情報も対象になります。採用時に履歴書、職務経歴書を預かり、雇用契約書を作成し、就業規則、職務注意事項などを示すことになります。これらは労使個々が責任を持って保管することになります。

私が社会人になった40年以上前と今日では個人情報についての考え方が大きく違っています。例えば、昔は入社後に希望すれば、氏名、住所、TELが記載された社員名簿の写しをもらうことができ、社員の連絡網、上司や同僚へ年賀状やお歳暮などを送るために使うことができました。

現在では、すでに会社だけでなく、地域の自治会の連絡網もなくなってきています。高度情報通信社会になったことで、個人情報が以前にもまして悪用する範囲の拡大や経済的な価値を持つようになりました。子ども向けの教材を販売している大手企業が被害を受けた事例からも容易に推測することができます。

高度情報通信社会では、想像以上に個人や法人が持つ社会に対する影響力が広がっていることに気付くことがあり、意図的でなく、無意識(善意)での情報発信にも注意が必要になってきました。ふと、地域にどのような方が住んでいるのかを相互に知ることよりも、知られたくないことを選択する社会的価値の変遷を感じています。“権利が増えれば義務も倍加することになる・・”とつぶやきつつ、現代に生きることの大変さを感じ、古き昭和の時代の波長からの脱皮を試みているところです。

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