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新しい就労支援に思いを込めて
いろはにほへと・・・から始まる多様な意味を持つ日本語、その言葉の美しさに感動し、山々に囲まれた奈良の地で福祉活動を本格的に始動して6年目になりました。万葉集に「大和には、群山あれど、とりよろう、天の香久山、上り立ち、国見をすれば、国原は・・・」なる和歌があります。緑の山々に抱かれた、ごく日常の奈良の地と庶民の生活を素朴に詠んだものです。言語が持っている豊かな表現性を感じるものです。現代でも、日本語をできるだけ的確に使って、他者に思いを伝えることを大切にしています。記号として無機質な言語に、感情を持たせて、状況に応じた使い方をしています。ともすると発した言葉が、無意識のうちに意味を変え、いつしか意図していないことを相手に印象付けてしまうことがあります。心配りをして、丁寧に言葉を使い、細やかな相性を育みながら、これからのぷろぼの活動を広げていきたいと願っています。
この4月から新しい就労支援システムを進めています。八木の事業所ができ、80人を超える方が就職を目指して、日々、訓練を受けています。彼らにできるだけ最適な就労支援プログラムを提供していきたい、との思いで取り組んでいます。これは3つの要素「時間性、継続性、応用力」で構成されています。就労支援事業の利用は原則2年間なので、1年目のカリキュラムと2年目の役割や目的を明確にしました。
1年目の目的は、社会人としての基本的な仕事力として、時間の意識、継続する心身の耐性の強化、場に応じた対応力の育成としています。具体的には、規則の順守、報・連・相、挨拶、他者への気遣い、情報化社会に必要なパソコン操作の習得です。いくつかの訓練プログラムで実際に作業や操作をし、ひとり一人の適性や思いを考慮し、これらの習得を目指しています。その成果を、「職業能力評価票」や「自己整理シート」にまとめて、就職イメージを広げていきたいと考えています。
2年目は、1年目の訓練成果を基に「個別支援計画書」を作成します。主に仕事に対する具体的な思いや、やりがいをイメージできる訓練プログラムです。これまで培った技能を仕事の場に近い環境で対応するための内部実習を行います。この実習は、働く場づくり事業を行っている「ITセンター」が担当しています。ここでは、画像や文字のデジタル入力、HPの制作や更新、DTP、中古PCのメンテナンス、帳票類の仕訳やデジタル入力、軽作業など、多くの実務を準備しています。すべて実践型の業務スタイルになっています。
次に、一般就労に向けた働くイメージづくりの訓練プログラムを行います。履歴書の書き方、面接の受け方、キャリアコンサルティングなどの支援をします。働くことで生活環境が変わり、やりたいことの可能性が広がることが実感できることをテーマにしています。
奈良には障害者雇用ができる企業が多くはありません。ですから新しい職場作りの取組をしています。これは障害者を戦力として雇用してもらうためのものです。これらの事業で、職場を広げ、職種を多くし、仕事の楽しさ、満足感、いい汗、仲間への気配りなどを学びます。これらの業務は、福祉事業所と広域事業部が担っています。
新しい就労支援システムは、1年目の基礎訓練と2年目の応用訓練で構成されています。言葉や体験で身につけた知識が実習で具体的な成果になり、徐々に働くことの厳しさと楽しさを実感できるようになります。これを遂行するために、福祉事業部、ITセンター、広域事業部の3つの部門が細かく対応できる体制づくりを目指しています。
人は社会で育てられることは、周知のことです。訓練を通じて、人と関わり、知識を得て、感情を揺り動かし、悩みながら人生をおくることになります。それが成人して、生家を出て、自立し自らの力で生きていくことに繋がります。障害があっても、なくても成人になれば、自立した生活をすることは、“人生を楽しむ”ことの始まりなのです。ひとり一人が、働くことで得られた小さな自信の蓄積に“よくやった”と、胸を張れるようにしたいものです。