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当事者の意識
先日、奈良で日本保健医療行動科学会の学術大会が開催されました。テーマは“当事者として感じ、語らう”で医療、看護、心理、福祉など多様な分野の研究者等が参加されました。大会長は東大阪大学教授の梓川一先生で、社会福祉法人ぷろぼのがまだ無認可の作業所時代から福祉事業の助言をいただいていた方です。事前にお声かけ頂いたこともあり、22日に梓川先生の基調講演“ささえあいから生まれる苦悩の語りと価値認識の変容”であり、ご自身の闘病生活と過ごした日々の様子を体系的にまた思いを具体化されてお聞かせいただきました。とても心に沁みる良い時間を過ごすことができました。
ここで語られた「当事者」は多くは障害や病気を患っている方として表現されていました。議事が進行するにしたがって、私は「当事者は全員」との思いが芽生えて、「当事者の意識」をもって主体的に生きることの大切さを感じるようになりました。当事者とは特別な対象ではなく意識の持ち方によって価値が決められることになる手順を知ることもできました。
学会では、ナラティブをキーワードに「語る」の意義から、従来のように語る側や聞く側が決められているのではなく、聞く側の悩みや思いを知り、その立場で語る側が伝える工夫をするなど、決して一方通行ではなく双方向で語り合いをすることで、言葉の根底になる気持ちや心情に触れることができとの思いがあり、多様な話題も当事者として理解することができるようになるとのことでした。
福祉事業でも、「当事者意識」は重要なテーマになります。法人なので現場を担当するもの、相談や就労支援で企業を担当するもの、また運営を任されるもの等がおり、それぞれに業務の役割が与えられることになります。いつのまにか雇うもの、雇われるものや上司や部下などの関係が生まれることもあります。福祉分野は「当事者」が障害者になり、特定の考えや心身に課題がある方として、弱い印象を与えることがあります。支援する側とされる側の関係ができ、いつのまにか慣れからくる思い込みが生じます。それでも法人に関わるすべての方が「当事者」として、自らが法人を運営する主体者として、思い、行動することができる環境づくりの重要性を感じています。
これからは当事者の範囲を広げ、いろいろな当事者があり、障害者だけでなく職員も関係者もすべての方が当事者であるとのユニバーサルな意識をもつことができれば、福祉が掲げる“お互い様の精神“に近づくことができます。
多くのことを身近に感じることができた学会でした。