ブログ

子どもたちは地域が育てる

もう50年も前のことになりましたが、私が中学を卒業し高校に入った時に、田舎ですから学校には自転車で通学することになりました。小学校、中学校は地元で3キロほどの距離に学校がありましたが、高校は自転車で20分以上かかるところでした。まだ自動車の量も少ないころでしたので、道路の左側を一列になって、朝、遅刻を気にしながらペダルを踏んでいたことが懐かしく思い出されます。

15才の春の生活は明らかに中学までの風景とは違う世界になりました。目に入る街並みや出会う人々の大人びた雰囲気がとても印象的でした。このころから大人への歩みが始まったのでしょうか、友人の数や会話の内容も急に増えてきて社会との接点が広がることを体感していました。

ロンドン大学の社会学者がこの時期に「若者の社会性」が著しく成長することを発表し、話題を呼んでいます。これを「社会脳」が形成される時期と位置付け、いくつかの実験事例が公表されています。この発表では、社会的成長が始まるときに、若者を導くために適切な指導者の必要性を説いています。良き指導者や環境を得ることができた若者は、急速に社会性が成長するとのことです、逆によき指導者に出合うことができなかった若者には、明らかに社会脳の成長が鈍化し、複数の社会的スキルの並列的な成長に乱れが生じ、偏った成長がみられる旨の報告がされています。

ぷろぼのでは、3年前から障害のある高校生を対象にした事業を始めています。児童福祉法に定められている放課後等デイサービス制度を「ぷろぼのスコラ」事業として実施しています。テーマは、“たのしく社会スキルを学ぶ”とし、月曜から金曜の夕方2時間の事業を進めています。利用されている方は、主に近隣の特別支援学校や支援学級に通学している方たちです。支援のポイントは、コミュニケーション方法についてのアセスメント、感覚統合の特性、体力や知力の育成、にしています。

この事業は、利用される若者の24時間、1週間の生活履歴の把握が必要になります。日々のなにげない生活習慣やスタイルから、課題や特性を明確にし、共有して個別の支援計画に沿った支援につなげています。スコラに来られた様子や成果を都度、保護者にお伝えすることの大切さを感じています。さらに家庭、学校、福祉の3者が密接に連携することが必要になります。

“子どもたちは地域が育てる“の意味がますます鮮明になってきます。地域の教育や福祉が整備され、生活のための資源が有効に活用できる態勢の整備こそが、子どもたちの成長に不可欠であることを感じています。来春には、スコラ事業の卒業生がでますが、彼らが利用した当初から大きく成長した姿をみることが私たちの望みです。できるだけ多くの利用される方が、ご希望される進路に進むことができるように“この時期”を大切にしていきたいと考えています。

Page Top