ブログ
制度のはざま
障害者の就労系福祉では、障害者手帳を有する者、ないし心療内科等の受診歴のある方が福祉サービス事業の利用者として、就労に向けて福祉的な支援を受けることができます。ただ上記の対象者以外で生活や就労に困難さを持っている方は、今日ではダイバーシティの対象者とされ、年齢、性別、人種、国籍、障がい、性的指向、宗教、価値観などの要件で専門家による事前のアセスメントを受けることで、別途の支援を受けることができます。
①生活困窮者自立支援制度:生活に困りごとや不安を抱えている方に、住居確保給付金や就労準備支援などを行う制度です。
相談支援機関でアセスメントを受けて、将来的に一般就労が可能と認められ、状況に応じた柔軟な働き方をする必要があると判断された方になります。具体的には、直近の就労経験が乏しい、ひきこもりやニート、長期間失業状態が続いている及び未就職の高校中退者になります。相談窓口は、自治体の基幹相談室や「くらしとしごとサポートセンター」があり、仕事や住まい、家計などに困りごとや不安を抱えている方に対して包括的で継続的な支援と共に住居確保給付金や就労準備支援などのさまざまな支援を受けることができます。
②求職者支援制度:再就職や転職、スキルアップを目指す方が、月10万円の生活支援の給付金を受給しながら、無料の職業訓練を受講する制度です。
奈良県では、多くの職種に共通する基本的能力を習得するための「基礎コース」と特定の職種に必要な実践的能力を習得するための「実践コース」では、パソコン基礎・事務分野、営業・販売分野、医療事務分野、介護福祉分野、デザイン分野、理容・美容関連分野などが用意されています。訓練後の就職支援は奈良県では、希望する求職者と県内企業とのマッチングを支援する就職支援サイト「ジョブならnet」があります。失業などによって生活が困窮し、経済的な自立のために、社会福祉協議会から総合支援資金を借りることもできます。
今の就職支援制度は、相談者が相談機関を訪問し、相談及びアセスメントを受けて、一般企業に週に20時間、6か月以上雇用され、働き続けることができるかどうかを評価されます。「就職支援」には個人事業や内職などの働き方は対象になっていませんので、障害認定されない身体に違和感のある方や癌等で継続治療を受けながらの方、週に20時間以下の労働を希望する方、訓練の会場に指定された時間に通所できない方は利用することが難しくなります。また訓練の場には職務の専門の講師はいますが、福祉の専門家はいないので、他の受講生と協調することも必要になります。
制度の課題としては、ヤングケアラー(介護者)や養護施設の高校生、シングルで子育て中の親のように、放課後や夜間や休日に相談や訓練を在宅で受講できる内容にはなっていません。ダイバーシティの活動は多様な価値を認め合うことですが、まだ雇用に場では仕組みが追い付いていないので、公的な制度の空間を補填する民間の取り組みが求められます。