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「福祉」の自負

奈良にも桜の開花が聞こえるようになり、近くの佐保川沿いの桜が楽しみになります。この頃には職員のみなさんは年度の事業計画や報告書の作成で忙しくなります。今年度は事業規模や就職者数の目標には届きませんでしたが、それでも相応の結果を出すことができました。特に4月から就職される方には“がんばれよ”と背中を押してあげたい気持ちになります。

障害者の就労事業に、就労継続支援A型事業(A型事業)があります。これは利用される方と福祉事業所が雇用契約を結び、福祉的な支援を受けて、最低賃金以上の労働を行う制度になります。奈良県下に20数か所の事業所が登録され、業務は飲食関係のサービスや調理、ハウス栽培で農産物の提供、クリーニング業、経理や総務の事務関係、ホームページやチラシのデザイン制作などがあります。それぞれに工夫して、賃金相応の利益を追求する事業に取り組んでおられます。

新年度から障害者総合支援法に定めがあるA型事業が「見直し」されるようです。この制度は、福祉が基本なので、利用される障害者の福祉的な支援として、職員の給与や運営費などは国から支援費が事業所に支払われます。なので利用者の給与分のみを労働で利益を得て支払うことになります。そのために利用者の勤務時間も一日8時間を上限に障害の程度などを考慮して自由に選択できるようにもなっています。

これに対して、一部のA型事業者が給与に相当する仕事を準備することなく、また労働時間を一律一日4時間程度にするなど制度を逸脱した行為をするようになり、この3年間で全国に3,000件ほどに急増したので、この現状を改めるために、「見直し」が行われるようです。

人が「はたらく」ことは、本来、経済的なこと、社会への貢献、個人の目標への挑戦などにありますが、労働と対価が見合うことなく給与が支払われると、経験の少ない障害者は労働を安易に理解することになり、事業所の継続が難しくなると再就職の活動が大変になります。

「福祉」は人を幸せにする概念や制度であり、安全や安心を得て日々の生活を保障する役割を担っているのですが、制度を逸脱している事業者は、働きたい障害者の未来の可能性を無下にしていることになります。福祉を担う者として、これを機会にさらなる自負のこころを育みたいものです。

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