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「福祉」とビジネス手法
先週、岡山県倉敷市で手広く障害者の就労を支援する福祉サービスの就労継続支援A型事業(福祉A型事業)を行っている一般社団法人が、突然に今月末で事業所を閉鎖して、そこで働いている220人の障害者を解雇するとの予告を発表しました。報道によると、この法人が運営する5事業所は当初より就労事業は赤字であり、国から給付される公費を頼りに運営していたとのことです。
この福祉A型事業制度は、2本立てになっていて、①就労支援事業として、仕事をして収益を得て給与を支給する事業と、②福祉支援事業として、障害者が働くうえで必要な生活面や社会性についての対応や障害についての認識や職場での配慮事項の取り決めを行う福祉的な事業があります。事業所には利用定員に応じて福祉的な専門性を有する職員を配置することになっており、その職員のために公費が支払われています。
今回、問題になっている点は、①の就労事業での収益が赤字であることです。仕事は農業や漁業ネットの補修などの軽作業のようで、事業自体に最低賃金以上の収益性が見込まれない廉価な仕事しか準備できなかったことにあります。
就労支援事業が赤字なのに“なぜ”これまで事業を継続できたのかは、②の福祉支援事業を担当する福祉職員のために支払われている公費を就労支援事業に転用したことにあります。本年1月に厚労省から福祉A型事業所に対して、①の就労支援事業は独立採算会計を指導しており、②の公費を①に転用してはいけないと具体的な事例を引用して通達が出ています。
本来、福祉A型事業は、障害者が一般企業での就労が難しく、福祉的な支援があれば一般の方と同等の生産性を上げることができる、そのような方に働く場を提供することが主旨になっています。また将来、企業の環境が整備されることがあれば、一般就労ができるように日々、実践の仕事を通じて職業能力を向上させる取り組みをすることが求められています。
この数年で福祉A型事業所が全国で3,500件以上に急増した背景には、この福祉事業を悪用して利益だけを追求する事業者と“制度ビジネスを推奨するコンサル”がいることも大きな要因になっています。彼らは“儲かるからやっている、儲からないのであれば撤退する”、ここには福祉的な理念も思いもないように感じます。
障害者総合支援法は、障害者が可能であれば就労による経済的な自立を目指すためのものですが、配慮ある福祉制度が今回のような未熟なビジネス手法や行為によって、誤解を生じてしまうことを危惧しています。この機会に自治体等の公的機関と協力して福祉制度の適正な運用が推進できるように頑張っていきますので、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。