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福祉と企業
昨今、働き方についての検討がすすんでいます、私は、働くことは人が日々を生きるための大切な行いであるとの思いで、40数年仕事をしてきました。若い頃は帰り際に上司から明朝の会議で使う資料作りを命令されたことも多々あり、それが苦痛でなく評価の機会をいただけたとの思いがありました。このところの議論は随分変わり、以前のように時間をいとわないで猛烈な働き方を支持することは少なくなり、プライベートとのバランスやダブルワークなど多様な生き方、働き方も増えてきました。
私が最初に就職した企業は年功序列、終身雇用の典型的な日本型経営スタイルでしたので、全員が新卒であり独自の企業文化が作られており、安定と共に安心して働くことができる環境でした。その頃の給与明細書には、基本給にプラスして交通費、家族手当、住宅手当、資格手当など幾多の手当てが付いており、夏冬の賞与もありました。その当時は手当や賞与があることを疑問に感じることもなく当然との思いもありましたが、外国人スタッフから自国では、職務を達成するために年収契約をしているので「手当や賞与」などはなく、それらが日本独自の制度であることを知りました。
日本企業が「手当や賞与」を支払う理由を想像してみると「従業員に対する配慮や家族意識」が根底にあると思います。例えば、夏冬の賞与の時期はお盆や正月休みで帰省するのでお土産や旅費の補填であり、通勤手当は工場などに労働者を安定して雇い入れる目的、家族手当は30から40代に家族の生活や教育費が増えることの対応であるとすると、これらが福祉的制度であると考えることもできます。働き方が検討される過程で効率論が優先することで、労使関係のよき企業文化が削がれてくることが懸念されることになります。
一方、同じ時代の日本の福祉制度ですが、ようやく戦後にはじまり、老人介護制度や障害者支援制度の実施はさらに遅れました。今後、企業が福祉的な制度を削減するようになれば、従業員の安心や安全に大きく影響することになります。働く人たちが働き方の多様性を得る反面、労使の関係性が希薄になることのデメリットがあることも認識しておく必要があります。
データによると世帯別の人数は2.47人まで下がりますます核家族化が進み、共働き世帯は1129万世帯でこの15年で18%以上増え、福祉予算である社会保障費のGDP比も22.9%まで急上昇しています。
「福祉」は私たちが生きるための安心、安全の基盤であり、家族や地域がこれを支えているのですが、これが生産人口の労働化が加速されることで、誰が家族を看るのか、子どもを育てるのは誰かについても注視しておく必要を感じています。