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己を知ることから

奈良も秋が深まり公園の木々の紅葉もそろそろ散り始めるころになりました。学生にとってこの時期は進学や就職活動に忙しいことと思われます。文科省の発表によると大学生の0.5%に障害のある方がいるとの調査結果があります。奈良の大学でお聞きしてみると、概ねその3倍ほどの学生がいるとのことです。危惧することは障害者手帳を持つ学生は本人も周囲の方も認識されていますが、本人も家族も大学側も認識していない学生が多くいることです。

報告では、入学時によくある傾向では、なんとなく登校できない、同級生と会話ができない、友人ができない、授業についていけないなどがあります。私の時代は5月病などと表現されていましたが、それが長引くようだと「障害」を疑ってみることも必要になります。また就職活動を始める3年、4年生の傾向としては、ゼミになじめない、担当教員と話ができない、卒論が書けない、授業と就職活動の両立ができない、などもあります。

それでも関係者からお聞きすることは、大学に入学できるほどの学力があるので、「障害」があるとは思えないと言われる方が多くおられます。しかし学力と「障害」とは必ずしも関係があるわけではなく、特に「発達障害」は知的な障害がない方も多くおられることをご存知の方が意外に少ないようです。特徴的な症状は、勉強のように設問があり、答えが決められたものや体系的で一定のルールが明確なことは得意であっても、予定が突然変更になることやあいまいな表現の場合に、それを理解して的確に行動することができない方もおられます。
「障害」は知らないまま放置しておくと、時として負のスパイラルを起こすことになります。人の顔や名前を覚えることが苦手な「障害」の方は、友人ができずに徐々に自信を失い、症状が進行して過呼吸やパニックを生じてしまうことにもなりかねません。

学生で障害があるかもしれないと認識することは、本人もご家族も大きなショックを受けることもありますが、それでも早期に原因を判明することは、結果的に本人が救われることにもなります。
人が生きていくためには、社会になじむ適応性が求められます、知識や技術、学問は、個人の努力でも一定取得できますが、社会適応性は、社会に出て他者との交流でしか得ることはできません。家族とは長い間に培った信頼や安心がありますが、社会ではそれを最初から作り上げることになります。福祉はその役割を担っているので彼らと伴走しながら日々の事象に対応していきます。奈良でも障害があるかもしれない学生に向けた支援の取り組みの必要性を痛感しています。

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