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介添え役は「木」
奈良の比較的便利な場所に障害福祉に関するすべての相談や訓練が受けられ、働くこともできる場を作りたいとの思いで、数年前から関係機関や職員一同で準備をしてきました。みなさまの協力をいただいて、「ぷろぼの福祉ビル」として、地元の木を使って4月の竣工に向けて建設が進んでいます。歴史的な木造建築物がある奈良にふさわしく、そして利用される障害のある方や訪れるみなさまにやさしい空間を提供したいと考えています。
現在の建築基準法では木造は4階建てしか認められていませんので、1階をRC鉄筋で2階から5階までが木造になっています。木造建築は主にCLT(Cross Laminated Timberの略称で、ひき板を並べた層を、板の方向が層ごとに直交するように重ねて接着した大判のパネル)を使用しています。福祉施設に初めて使用されるとのことなので、設計者、施行者等が多くの知恵と試行錯誤を繰り返しながら、着々と工事が進んでいます。今月下旬からいよいよCLTの組み立てが始まります。
このような機会に、CLT材を提供していただく岡山県真庭市の銘建工業株式会社の代表取締役社長中島浩一郎様が奈良にお越しになりました。少しお時間をいただいてお話をさせていただきました。中島様からは、日本は木造建築など木を使う文化が長く主流であったけれども、近年、木材価格の下落などで林業が低迷し、職人さんもまた山守さんも少なくなり、山林の所有者にとっても厳しい状況になっている。これは日本だけであり、特にヨーロッパの林業は主要産業になっており、山林の所有者に資金が循環される仕組みができているとのことです。またCLTの普及は急速に進み、すでに高層ビルや大型のショッピングモール等も建築されており、驚くことにカナダでは自然保護の目的でコンクリートに代わり、道路の敷板として数100kmも使われているとのことです。
木造ビルには木がもっている人にやさしい素材であるとの利点があります。都会地でよく見られるコンクリート造りや石油素材の内装できれいに仕上がった室内が、いつのまにか人の日常生活に負荷を与えていることが、近年研究されるようになってきています。外気と室内気の差が多いことや空気中の成分や視覚的な快適空間について、CLTがどのような効果を示すかは今後注目するところです。
このように「木」が、人が生きる本来の姿を示唆してくれています、また多くの方との出会いも作ってくれています。「木」が人と人、人と社会の介添え役になっています。奈良の市街地の大宮町で「木」の介添え体験をすることも楽しみを倍加することになるでしょう。