ブログ
CLT工法による福祉ビル
小春日和の奈良に工事用シャベルカーの音が、そそくさと聞こえてきます。待望のぷろぼの福祉ビルの工事が始まりました。このビルは、1階がRCコンクリート造り、2階から5階までが木造となる複合型の建築物で、使用目的は障害福祉施設になります。奈良の中心地新大宮に障害者等の就労を総合的に支援する、福祉ビルを建設することを目的に準備を進めてきました。
木造建築手法は、話題のCLT(Cross Laminated Timberの略称で、ひき板の各層を繊維方向が互いに直交するように積層接着した集成材を示す用語)、)工法を使用することになっています。CLTは柱、梁、壁材に使用し、床は従来の軸組になります。使用する木材は約330㎥、地元奈良の材を大半使用することになります。
CLT工法を福祉施設に採用するに際して、”人にやさしい空間”をテーマにその利点を検討しました。推測ですが、集成材の厚みからくる通気性の良さ、安定した温度や湿度の維持、冬場の結露の懸念を払しょくする断熱性、体感的に厚みのある木がもつ温かい空気感、50年の使用に耐える耐震強度、木材の産地である奈良に地元の木材を使った公共福祉建築物がある意義、木材産業的にはB材が使えること、などの可能性を考慮し決定しました。
反面、CLT工法を採用することの不安点として、現状では正式に建築材として認められていないために、構造上の精度を証明するために実験によるデータの提示が求められること、建築申請に国土交通大臣の認証がいること、5階建てなので時刻歴応答解析が求められること、実績のある工事施行者がいないこと、建設費が高騰する可能性があること、竣工時期が決められていること、などもありました。
設計は浅田設計事務所の浅田耕一先生、工事施行は地元企業の大倭殖産株式会社様、CLT材については岡山の銘建工業株式会社様のご協力をいただいています。また助成金としては、奈良県農林部奈良の木ブランド課様から「森林整備加速化・林業再生総合対策事業」の助成を、また、日本財団様から主に機器整備の助成をいただいています。
おかげさまで皆様の温かいご支援を得て、来年3月末の竣工を目指すことになりました。このビルが障害者の就労支援を基軸に市民活動や地場産業の拠点になれますように、今後運用面の計画を精査していきます。