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クロッカスと16時間
小さな庭にクロッカスが鮮やかな花を咲かせる準備をしてくれています。寒さに耐えている間に、いつしかカレンダーから2月が過ぎ去ろうとしています。以前闘病中の寒い日に勇気づけてくれたのがこの花なので、私にとってはこの時期の大切なものになっています。
16年前に病気が見つかり、新宿西口にある東京医科大学付属病院に入院しました。耳鼻咽喉科は高層ビルの13階にあり、12月25日が手術の日でした。手術は10時間近くかかり麻酔から目覚めたときには、世間はクリスマスを祝っているようでした。一か月の入院を経て、奈良に帰って来たのが2月中旬、とても寒い日でした。しばらく自宅で療養することになり、暖かくなった折に、数年前に植えたクロッカスが原色の花を咲かせました。花の少ないこの時期に水仙とは違って、土から短くて太めの茎を伸ばし鮮やかに咲く花がとても力強く印象的でした。
奈良に住むようになり、なぜか草花に興味を持つようになってきました。小さな庭には、季節に沿って水仙、カーネーション、カラー、桜草、コスモスなどが自生しています。草花は手がかからなくて楽しめるので、不精な私には最適なのですが、10数年前から始めた家庭菜園は大変です、まるで季節に追われているようです。いまの時期は、ほうれんそう、小松菜、菜の花、白菜、大根など冬野菜の仕上げをします。食卓には当然のように、これらを使った料理が大量・・に並ぶことになります。
毎年のことなのですが、なぜか花も野菜も季節を正確に記憶しているのです。私たちが春の訪れが少し早いとか、遅いとかを感じていても、彼らは正確に時期を見極めています。種類によっては、2週間植え付けが遅れると、期待する成果を得ることができなくなります。
草花や野菜に触れることで、私たちは「時間、季節」に従った決め事で日々を過ごしていることに気づかされます。生活スタイルを振り返ると、一日は24時間であること、睡眠は概ね8時間であること、後の16時間は起きているということです。
闘病生活をしていた時は仕事も辞めて、ただひたすら次の検査の結果を待つだけの日々でした。結果が悪ければ治療をする、問題がなければ次の検査までを淡々と過ごすだけでした。起きている16時間を過ごすことが意外と大変であることを感じていました。
仕事をしているときは、すぐに日々が過ぎ、16時間を意識することもありませんでしたが、何かをしなくなった時点で“過ごすことの大変さ”が、私には重荷になってきたのです。そのようなときに幸いにも、私は「ボランティア、プロボノ」活動に出会ったのです。16時間を過ごすために始めたものを大切にして、今も続けています。