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集団バランスの妙
十人十色・・人が集まればいろいろな思いを持っている方がいます。だから人が集まればいつの間にか闊達なおしゃべりが始まります。福祉の現場でも同じで、10代から50代の方が同じ空間で、就職を目指して訓練を受けています。事前に用意されたカリキュラムに沿って訓練を進めていきますが、利用者の受け取り方はさまざまです。理解力の差やその日の体調などもありますが、多くは人それぞれの「価値感」です。同じ説明であっても、心に響くものに違いがあります。同じ講座を開いても、全員に同じようには伝わらない、受け入れる内容に差が出てきます。実はこの「差」が大切で面白いのです。
先日、企業家向けのコミュニケーション講座に参加してきました。目的は“伝える力を養うこと”です。いくつかの色や形が違う図形を用意し、2名が一組になって決められた時間内に相手に、完成した組み合わせ図を言葉だけで伝える・・このような講座でした。講師の指示に沿って言葉を選び、伝えると、自己流でやるよりも、より早く完成図が出来上がります。コミュニケーション分野にもこのような技法があるということです。
ぷろぼのの通常訓練にもこのような手法が取り入れられています。SSTやコミュニケーションプログラムでは、できるだけ日常のシーンを想定して、生活や社会的な話題や職場で生じることをテーマに会話を進めています。ただこのような技法を有効にするためには、参加者の構成が大切になります。同世代や同性だけでなく、また同じ障害だけでなく、社会や職場で自然にある構成が重要になります。就職経験のない若い方、仕事経験のある方、元気で明るい方、黙ってみんなの言動を見ている方などで集団が作られます。言葉の使い方も価値観も経験も、将来の目標もすべて違った方の集団ですが、しばらくすると笑い声が聞こえてくるようになります。不思議なことのように思えるでしょうが、会話がはずんでくるのです。
障害福祉の分野では長く同じ障害特性をもつ方に向けた支援や施設の整備がされてきました。それではともすれば、行政や施設側の都合を優先する傾向が生じてしまいます。利用者である障害者の視点を重視する必要性を感じています。障害者が地域社会で自立した生活をすることを考慮すれば、訓練の場でも多様な障害者が混在した訓練環境が最適になります。人は生まれたときから、両親や多くの大人に囲まれて人生が始まります。成長の過程で、徐々に相互に頼り合い、助け合って生きていくことを学びます。「集団バランス」は人が生きていくためにとても大切なものです。これからも「集団バランス」を守りながら、障害福祉の現場を活気のあるものにしていきたいものです。