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素に分解してみると
妻との会話から、“そろそろ月末ですね・・”、夕食後にのんびりテレビを見て楽しんでいたときに、妻がごく自然にこのような問いかけとも、要望ともとれるような言葉を投げかけてきた。
永く夫婦をしていると、この主語も目的語もない言葉が自然にその意味と意図が伝わってくる。私は“そうだね、明日でいいですか”とだけ応えると、妻は“お願いします”とだけ言った。この文を読まれている方は、どのようなことなのか理解できない方もいると思います。また私と同じように永く夫婦をしている方で、月末近くが給料日の方はおわかりになるでしょう。最初の妻の投げかけの文を正確に表記すると、“そろそろ給料日ですよね、月末までに私にあなたから生活するためのお金をいただけますか?”となる。日本語の持っている不思議さと奥深い・・夫婦間だけの使い方である。
またこのような使い方は、職場でもよく見かけることがある。“○○君、このまえの大丈夫かい?”、上司が職場で部下にこのように伝えると、部下は自然に“このまえのA得意先は順調ですが、B得意先は難航中です”との報告をする。この前提には、事前に業務に対する指示と報告が正確にできていることが必要となる。上司が部下に正確に業務内容を説明し、理解できていることを確認していて、はじめてこのような簡略な会話が成り立つことになる。
夫婦間では、長年の共同生活から生まれる、信頼感や会話手法が身につき、自然に言葉の裏に含まれている内容を読み取り、正確にその意図を把握できるようになる。また職場でも日常の仕事を協力して取り組むことで、相互に信頼感が生まれ、相手を思いやる気持ちが生まれ、簡単な表現でもその意味や意図が理解できるようになる。
会話は言語的には日本語、単語などの記号の羅列ですが、その並べ方や使う環境などで、多様な意味をもつ表現となる。使い方や環境を理解して使用すると、正確に意図が通じる日常的な会話となる。
障害者の職業訓練の大きな要素として、ヒューマンスキルの習得がある。社会人マナー、ビジネスマナー、ジョブガイダンスなどの科目があるが、これの基本ツールは言語となる。主語も目的語も時には、動詞までもなくなる不思議な日常会話型の日本語を駆使して、場面場面を想定して使い方の訓練をする。ただ日々繰り返すことで、そこにも徐々にではあるが”信頼感“が生まれてくる。そして訓練を通じて彼らが日本語を的確に使えるようになる時期が近付いているように感じている。